営業活動を効率化するため営業支援ツールSFA(Sales Force Automation)/CRM(Customer Relation Management)を導入する企業が増えています。SFA/CRMには顧客管理機能や案件管理機能、商談管理機能などがありますが、運用するには業務プロセスの中にデータ入力ポイントを作り、データをインプットしてもらう必要があります。本記事では代表的なSFA/CRMツールの一つであるセールスクラウド(Sales Cloud)の機能や評判を紹介します。SFA/CRMツールを選ぶ際の参考としてください。
セールスクラウド(Sales Colud)とは
セールスクラウド(Sales Cloud)はセールスフォース・ジャパン株式会社が提供するSFA/CRMツールです。同社は国内外でトップシェアを誇るリーディングカンパニーで、15万社への導入といった圧倒的な実績を活かし営業の効率化を支援する企業です。セールスクラウドは同社が提供するサービスの中でもセールス領域に特化したSFA/CRMツールです。
セールスクラウド(Sales Cloud)が提供している機能
本章ではセールスクラウド(Sales Cloud)が提供する標準機能と連携機能を紹介します。
- 主な機能一覧
- 連携機能
主な機能一覧
主な機能一覧は以下の通りです。基本的なSFA/CRMツールの機能を標準搭載しています。
機能 | 機能概要 |
顧客管理 | 営業活動で接点を持った顧客との取引履歴や商談状況を一元化する機能 |
案件管理 | 営業案件の進捗状況や課題を管理する機能 |
見込み顧客管理 | 見込み顧客の基本情報や属性、興味関心などを管理する機能 |
レポート・ダッシュボード機能 | 営業活動の進捗や成果をデータとして可視化・分析する機能 |
モバイルアプリ | スマートフォンやタブレットから営業活動を管理する機能 |
メール連携 | メールなどの連絡ツールと連携し営業活動を効率化する機能 |
売上予測 | 今後の売上を予測する機能 |
ワークフロー設定 | 営業ワークフローを設定し、承認などの営業プロセスを効率化する機能 |
ファイル同期・共有 | 営業活動で使用するファイルを同期・共有するための機能 |
連携機能
セールスフォース・ジャパンは多くのソリューションを連携可能で、セールスクラウド(Sales Cloud)を中心として様々なアプリケーションと連携し機能を拡張できるのも強みです。例えば、東芝デジタルソリューション株式会社が提供するアプリ「RECAIUSコネクト」は、別アプリ「RECAIUS報告エージェント」と併用することで音声入力により報告内容をセールスクラウドに登録することができます。訪問先や案件名、営業結果を音声入力することでセールスクラウド内で報告書を作成できます。こうした他アプリとの連携事例はSaleforceのホームページ上で紹介されており、自社の目的に応じて最適な連携アプリを探すことができます。
セールスクラウド(Sales Cloud)の料金プラン
セールスクラウドを導入する際にかかる費用は製品にかかる料金と導入時のカスタマーサポートにかかる費用となります。
- 各プランの特徴と料金
- カスタマーサポートプラン料金
各プランの特徴と料金
セールスクラウドでは他SFA/CRMツールと同様、機能やカスタマイズ性に応じて料金が異なります。それぞれのプランと利用可能な機能一覧は以下の通りです。
Sales Cloud ライセンス | 1ユーザーあたりの料金(年間契約) | 主な機能 | 基本機能 |
Essentials | 月額3,000円 | 基本機能 | ユーザー数10名までの利用 |
Professional | 月額9,600円 | Essential+見積もり・請求書作成 | 中規模企業向け |
Enterprise | 月額19,800円 | Professional+レポート作成・ダッシュボード機能 | カスタマイズが自由に行えるライセンス |
Unlimited | 月額39,600円 | Enterprise+さらに詳細な分析やリモート会議機能など | 機能やサポートが無制限 |
カスタマーサポートプラン料金
セールスクラウドでは導入時にカスタマーサポートプランを選択する必要があります。プランはStandard Succcess Plan、Premier Success Plan、Signature Success Planの3種類です。Standard Succcess Planはすべての製品プランに含まれているプランで、無料でサポートを受けることができます。Premier Success Planは年中無休24時間のサポートやエキスパートによるコーチングといった教育を受けることができるプランで、料金は該当ライセンス料の30%となります。Standard Succcess Planはテクニカルアカウントマネージャーがサポートにつき、サポート応答時間もPremier Success Plan以上に高速になります。料金は要問い合わせとなっています。
セールスクラウド(Sales Cloud)を導入する3つのメリット
セールスクラウドを導入することの3つのメリットを紹介します。
- 1. 営業プロセスの効率化
- 2, 顧客データの一元管理
- 3. Einstein機能でAI活用による営業支援
1.営業プロセスの効率化
セールスクラウドでは営業プロセスをノーコードで構築できます。見積もりなどの承認プロセスを組み込むことで、営業プロセスのルールを明確化するだけでなく、セールスクラウド上でプロセスを完結することも可能です。適切なタッチポイントを設定することで営業状況の把握が容易になり営業プロセスを最適化できます。
2.顧客データの一元管理
セールスクラウドを導入することで顧客情報や営業の進捗状況などの営業データを一元管理できるようになります。営業活動の属人化を防ぐだけでなく、営業状況をチームで確認することで顧客獲得のチャンスの見逃しを防ぐほか、詳細なデータ分析により営業活動の改善などの効果も期待できます。
3.AIによる営業支援
セールスクラウドには「Einstein」というAI機能が搭載されており、顧客分析や売上予測が可能です。現状をリアルタイムに分析することで、目標を達成するために改善する必要があるかどうかを判断する手助けをしてくれます。
セールスクラウド(Sales Cloud)の評判・口コミ
セールスクラウドには基本的なSFA/CRM機能が搭載されているほか、充実したサポートプランを選択できることを解説してきました。本章では実際のユーザーの評判・口コミを紹介します。
- ポジティブな評価
- 改善を求める声
ポジティブな評判・口コミ
セールスクラウドを導入した企業からは「幅広い顧客情報を一元管理できる」といった声が多く見られます。セールスクラウドでは営業担当者が顧客とやり取りしたメールの内容、行ったアクション、ヒアリング結果のメモ、資料のアップロードといったあらゆる顧客情報をすべて取り込むことができます。幅広い顧客情報を管理できる点にメリットを感じている企業が多いようです。
また、様々な機能と連携可能な点も評価が高いポイントです。名刺スキャンツールやOutlookカレンダーとも連携でき、「スムーズな社内共有ができるようになった」といった声もあがっています。
改善を求める評判・口コミ
一方、「多機能でカスタマイズ性が高い反面、何を分析したいのか分からなくなる」といった声もありました。様々な機能が利用できるのはセールスクラウドの強みである一方、すべての機能を把握し使いこなすのは難しいと感じるユーザーが多いようです。自社の目的を明確にし、最低限の機能を使う必要があります。
セールスクラウド(Sales Cloud)を導入する時の注意点
セールスクラウドの評判・口コミを見てきましたが、それらを踏まえ本章では導入時の注意点を解説します。
- 導入前に自社の課題を確認する
- 導入後の定着化のために運用担当者を決める
自社の課題を明確化する
セールスクラウドは多機能なSFA/CRMツールです。前章でも見てきた通り、それが強みでありユーザーが使いこなすのが難しいという弱みにもなります。セールスクラウドを最大限活用するためには、自社に必要なのがどの機能かを明確にする必要があります。そのためには自社の課題を明確にし、目的を定めましょう。自社の課題を明確にすることで本当に必要な機能が見えてくるようになります。そのうえで、特定した機能を自社のユーザーに利用できるキャパシティがあるか確認しましょう。
セールスクラウド定着に向け運用担当者を決める
導入するセールスクラウドの定着に向け運用担当者を決定しましょう。セールスクラウドは導入しただけで運用できるわけではありません。ユーザーがツールを使いこなせる状態まで教育する必要があります。運用や教育に向けた準備を実行する役割を明確に設定する必要があります。
セールスクラウド(Sales Cloud)の導入をおすすめできる企業
セールスクラウドは幅広い顧客情報を収集できるSFA/CRMツールです。本章ではセールスクラウドの導入をおすすめできる企業の特徴を解説します。
- データ一元化を求めている企業
- データエンジニアが在籍している企業
- すでにSFA/CRM製品を導入している企業
データ一元化を進めている企業
すでにデータの一元化を進めている企業はスムーズにセールスクラウドを導入できます。セールスクラウドは膨大な営業データを利用するため初期構築が難しく、運用開始前に失敗するリスクもあります。すでに利用するデータが整理されていて、統合に向けて準備がされている状態であれば、比較的容易にセールスクラウドの導入を進めることができます。
データエンジニアが在籍している企業
膨大な量の営業データを管理、分析するためには人材も必要です。適切な分析ができるようUI/UXをカスタマイズする必要がありますし、肝心のデータ分析を高いクオリティで実行する必要があります。そのため、データエンジニアが在籍している企業の方がセールスクラウドを導入しやすい環境にあるといえます。
すでにSFA/CRMツールを導入している企業
すでに別のSFA/CRMツールを導入している場合も、セールスクラウドの導入は比較的容易にできます。SFAの基本的な機能は既存のツールを利用しつつ、高度なデータ分析、営業データの利活用を行う場合は、豊富な機能を搭載しているセールスクラウドで担うという利用方法を採用できます。
セールスクラウド(Sales Cloud)以外のおすすめなSFA/CRMツール
セールスクラウドは多機能で高度なデータ分析や売上予測が可能ですが、導入までの難易度が高いという特徴があります。セールスクラウド以外のSFA/CRMツールを紹介します。
ツール名 | 会社名 | 特徴 |
GENIEE SFA/CRM | 株式会社ジーニー |
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cyzen | レッドフォックス株式会社 |
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eセールスマネージャー | ソフトブレーン株式会社 |
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1.GENIEE SFA/CRM
ツール名 | 会社名 | 特徴 | 料金 | URL |
GENIEE SFA/CRM | 株式会社ジーニー |
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スタンダードプラン:10ユーザーあたり月額34,800円(税抜き) | https://chikyu.net/ |
GENIEE SFA/CRMは株式会社ジーニーが提供するSFAツールです。GENIEE SFA/CRMは使いやすいUI/UXに重点を置いており、スマホからもデータ入力が可能なため、高い定着率を誇ります。OpenAi社の生成AI「GPT-4」を標準搭載しており、高いセキュリティ環境で報告書やメールの文面を自動で生成できます。また、マップ上で商談履歴の更新が可能なため、外回りの効率も高めることができます。
2.cyzen
ツール名 | 会社名 | 特徴 | 料金 | URL |
cyzen | レッドフォックス株式会社 |
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初期費用(要問い合わせ)+1ユーザーあたり月額1,000円(税抜き) | https://www.cyzen.cloud/feature |
cyzenはレッドフォックス株式会社が提供するSFA/CRMツールです。cyzenでは報告書内の訪問件数など取得した営業データを自動集計しリアルタイムでランキング形式で確認できます。報告書をもとにPDF形式の帳票を作成することもでき、現地でスマホから出力することが可能です。また、他SFA/CRMツールと比較しユニークなのが写真の管理機能があることです。cyzenでは写真とマップのスポット情報を紐づけて管理でき、視覚的な情報も得ることができるほか、写真が改ざんされていないか自動でチェックできます。
3.eセールスマネージャー
ツール名 | 会社名 | 特徴 | 料金 | URL |
eセールスマネージャー | ソフトブレーン株式会社 |
|
スタンダード:1人あたり月額11,000円(税抜き)
※Remix Cloudの料金 |
https://www.e-sales.jp/ |
eセールスマネージャーはソフトブレーン株式会社が提供するSFA/CRMツールです。利用するユーザー数が31人以上の場合は「Remix Cloud」、30人以下の場合は「esm」と名称が異なり料金体系も異なります。eセールスマネージャーでは顧客の属性、状況に応じたターゲティングリストを自動で作成できるため、マーケティング活動を最適化できます。また、人脈管理においても他SFA/CRMツールでは名刺管理にとどまるところ、eセールスマネージャーではまだ接触できていない顧客情報や接触した顧客の購入意欲まで管理することができます。さらにセキュリティ面においては、ユーザー権限の制限や機密情報の制限といった充実した対策を行うことが可能です。
セールスクラウド(Sales Cloud)のまとめ
セールスクラウド(Sales Cloud)はセールスフォース・ジャパン株式会社が提供するSFA/CRMツールです。セールスクラウドは顧客管理や案件管理といった幅広い顧客情報を統合管理でき、外部ツールを含め多様なシステムと連携できる点に強みがあります。
一方で、多機能である反面、それらを十分に活用できないリスクもあるため、導入の際は目的を明確にする必要があります。また、セールスクラウドは膨大な量の営業データを扱うため、システム構築の難易度が高いという特徴もあります。すでに営業データの統合に向け着手していて、どのデータを利活用するか整理できている企業におすすめのツールとなります。